SNKの原点!AC版『サファリラリー』敵や動物をひたすら避ける激ムズドライビングアクション

アーケード版『サファリラリー』は、1979年に新日本企画(後のSNK)から発売されたビデオゲームです。ジャンルとしては、ドットイートタイプのドライビングアクションゲームに分類されます。プレイヤーは一台の車を操作し、迷路のようなサバンナのコースを舞台に、敵の車や突如出現する動物などの障害物を避けながら走り抜けることを目的とします。当時のアーケードゲームとしては標準的なトップビュー視点を採用しており、シンプルな操作性と、徐々に難易度が上昇していくゲームバランスが特徴です。SNKという、後に数々の名作を世に送り出すことになるメーカーの、まさに黎明期に誕生した作品の一つであり、その歴史的価値は非常に高いと言えるでしょう。グラフィックは単色に近いシンプルなものでしたが、ライオンやヘビといった動物のキャラクターが登場することで、タイトルの「サファリ」という世界観を表現していました。

開発背景や技術的な挑戦

アーケード版『サファリラリー』が開発された1970年代後半は、ビデオゲーム産業の黎明期にあたります。特に日本では『スペースインベーダー』の大ヒットをきっかけに、数多くの企業がビデオゲーム開発に参入し、アーケード市場が大きな盛り上がりを見せ始めた時代でした。新日本企画(後のSNK)も、そうした流れの中でビデオゲーム開発を本格化させた企業の一つです。本作に関する開発チームの具体的な構成や、開発中の逸話といった詳細な記録は、残念ながら現存する資料からはほとんど見つけ出すことができません。しかし、当時の技術的な制約の中で、いかにしてプレイヤーを楽しませるかという試行錯誤が随所に見られます。例えば、CPUの処理能力やメモリ容量が極端に少ない中で、複数の敵キャラクターを同時に動かし、プレイヤーの行動に対応させるという処理は、当時としては決して簡単なことではありませんでした。グラフィックにおいても、限られた数のドットと色で、車や動物といった対象物をプレイヤーに認識させるための工夫が凝らされています。本作は、SNKが後の『怒』シリーズや『餓狼伝説』シリーズなどで発揮する、アクションゲーム開発のノウハウを蓄積していく上での、初期の重要な一歩であったと位置づけることができます。

プレイ体験

プレイヤーは、画面上部に表示される自車を、4方向のレバーで操作します。コースは入り組んだ迷路状になっており、壁に接触することなく進まなければなりません。ゲームが始まると、画面の下から複数の敵車が次々と出現し、プレイヤーの車を追跡、あるいは妨害するように動き回ります。これらの敵車に接触してしまうとミスとなります。さらに、ステージの特定の場所では、ライオンやヘビといった動物がランダムに出現し、これらもまた障害物としてプレイヤーの行く手を阻みます。プレイヤーに与えられた唯一の対抗手段は、巧みなハンドルさばき、つまり正確なレバー操作による回避行動のみです。攻撃的な手段は一切存在せず、純粋にドライビングスキルと状況判断能力が試されるゲーム性となっています。画面内には特定の「ドット」のようなアイテムは存在せず、ひたすら敵から逃げ続け、一定の条件を満たすことでステージクリアとなるようです。単純明快なルールでありながら、敵の動きは巧妙で、プレイを重ねるごとに上達を実感できるという、初期アーケードゲームならではの魅力を持っていました。

初期の評価と現在の再評価

本作が稼働を開始した1979年当時のアーケード市場における評価を、具体的なメディアのレビューや売上記録といった形で確認することは、現在では非常に困難です。当時のゲームは、あくまで一時的な娯楽として消費される側面が強く、後世のために記録を残すという文化がまだ定着していませんでした。そのため、本作が当時のプレイヤーにどのように受け入れられたのか、その熱狂の度合いを正確に知ることはできません。しかし、SNKが本作の後に『オズマウォーズ』など、継続してビデオゲームをリリースし、企業として大きく成長していった事実から推測するに、商業的に一定の成功を収め、同社の基盤を築く一助となったことは間違いないでしょう。現在の視点から本作を再評価すると、その極めてシンプルなゲームデザインの中に、ビデオゲームの根源的な面白さである「避ける」という行為の楽しさが凝縮されていると言えます。複雑なシステムや美麗なグラフィックはありませんが、プレイヤーの腕前が直接結果に反映されるストイックなゲーム性は、レトロゲームならではの魅力として、一部のビデオゲーム史研究家や愛好家からは、SNKの原点を知る上で貴重な作品として認識されています。

他ジャンル・文化への影響

『サファリラリー』が、後のビデオゲームや他のカルチャーに直接的かつ大きな影響を与えたという具体的な証拠を見つけることは困難です。本作は、SNKの極めて初期の作品であり、市場における稼働期間も限られていたと推測されるため、社会的な現象となるほどの知名度は獲得できませんでした。しかし、間接的な影響としては、いくつかの側面を考えることができます。まず、本作のようなドライビングアクションゲームは、後に続く数多くのレースゲームやカーアクションゲームの系譜の、源流の一つと見なすことができます。敵から逃げながらゴールを目指すというフォーマットは、形を変えながら様々なゲームで採用されています。また、SNKという企業が、本作のような小規模な作品の開発を通じてノウハウを蓄積し、やがて『NEOGEO』というプラットフォームを生み出し、世界のゲーム市場に大きな影響を与える存在へと成長していった歴史を鑑みれば、本作もまたその壮大な物語の序章を飾る、小さな、しかし重要な一片であったと言うことができるでしょう。目に見える形での影響は少なくとも、後の大きな流れを作るための土台の一部となった作品です。

リメイクでの進化

アーケード版『サファリラリー』は、2024年現在に至るまで、公式なリメイク版やリマスター版は一度も制作・販売されていません。家庭用ゲーム機への移植に関しても、SNKが後に発売した『SNKアーケードクラシックス』のようなオムニバス作品にも収録された記録はなく、現在では実機のアーケード基板以外でプレイすることは極めて困難な「幻のゲーム」の一つとなっています。もし仮に現代の技術で本作がリメイクされるとすれば、グラフィックの向上はもちろんのこと、オンラインランキング機能の追加や、2人協力・対戦プレイモードの実装などが考えられるでしょう。また、オリジナルのシンプルなゲーム性を尊重しつつ、新たな車種やステージ、障害物となる動物の種類を増やすといったアレンジも、プレイヤーに新たな驚きを提供するかもしれません。しかし、現時点ではそうした動きはなく、本作はあくまで1979年のアーケードという時代の中に存在する、歴史的な遺産として静かに眠り続けています。

特別な存在である理由

本作『サファリラリー』が特別な存在である理由は、そのゲーム内容の革新性や商業的な大成功によるものではありません。その最大の理由は、本作が、後に世界のビデオゲーム市場を席巻することになる「SNK」という企業の、最も初期の作品の一つであるという歴史的な事実にあります。まだ社名が「新日本企画」であった時代に生み出された本作は、同社がどのようなゲーム作りからスタートしたのかを物語る、生きた証人です。豪華なグラフィックやサウンド、複雑なストーリーがなくても、プレイヤーを夢中にさせることは可能であるという、ビデオゲームの原点を体現しています。また、現存する情報が極めて少なく、プレイすること自体が非常に難しいという希少性も、本作を特別なものにしています。多くのプレイヤーの記憶からは忘れ去られ、記録にもほとんど残っていない幻のゲームでありながら、SNKという偉大なメーカーの歴史の礎を築いたという事実は揺るぎません。本作は、派手な脚光を浴びることはなくとも、ビデオゲームの歴史の片隅で静かに、しかし確かに重要な役割を果たした、特別な一作なのです。

まとめ

アーケードゲーム『サファリラリー』は、1979年に新日本企画(SNK)が世に送り出した、同社の歴史の黎明期を飾る貴重な一作です。シンプルなトップビューのドライビングアクションとして、プレイヤーに純粋な回避の楽しさを提供しました。開発背景や当時の評価に関する詳細な記録は乏しいものの、後のSNKの飛躍の礎となったことは想像に難くありません。現代においては、その存在を知る人も少なく、プレイする機会もほとんどありませんが、ビデオゲームが産業として確立していく過渡期の熱気と、作り手たちの試行錯誤の跡を感じ取ることができます。隠し要素やリメイク版は存在せず、その影響も目に見える形では残っていませんが、SNKの壮大な物語の原点として、歴史的に非常に重要な価値を持つ作品であると言えるでしょう。

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